林業に適したチェンソーの上手な選び方! 刃の使い分け方は?

DIYやアウトドアレジャーなどの人気を背景に、今やホームセンターでも見かける存在となったチェンソー。
しかし、「林業」に適したチェンソーとなると、パワーや稼働時間、切削性能など、家庭用とは異なる様々な点が気になりますね。
ここでは、林業に適したチェンソーの上手な選び方を、チェンソーの刃であるソーチェーンも含めて解説します。
チェンソーの動力源は3種類
林業に適したチェンソーを選ぶにあたり、まず初めに考えるべきポイントは動力源です。
チェンソーの動力源には、大きく分けてエンジン式・バッテリー式・コード式の3種類があります。
林業で使うチェンソーは、十分なパワーがあり、連続して作業できるエンジン式が選ばれることがほとんどです。
ただし、使用場所が制限される場合や、軽作業用のサブ機として選ぶ場合には、バッテリー式やコード式も選択肢となりえます。
排気量で選ぶチェンソー
エンジン式チェンソーの排気量は、20cc前後から、大きいものは100ccを超えるものまであります。
適切な排気量のチェンソーを選ぶことは作業のスピードに直結しますので、以下を参考に、目的や用途に適した排気量を選びましょう。
小排気量(35cc前後以下)
林業では枝打ち、枝払い、除伐、間伐、樹上作業などに向いています。家庭でのDIYや直径15cm程度までの庭木の処理、ウッドデッキの解体にもお勧めです。バッテリー式に置き換えても作業の支障が少ないクラスです。
中排気量(40cc前後~60cc前後)
林業のオールラウンダーとも言える、プロが日々の業務でメインとして使う排気量帯。プロでなくとも、より一段上の薪作りや自伐型林業に取り組みたい方にも向いています。その際は50cc前後以下を目安にご自身の体格も考慮して選択すると良いでしょう。
大排気量(65cc以上)
ここからはプロでも大径木の伐倒時や特殊伐採を生業にしている方々、根切り作業や日常的な縦挽きの時に必要な排気量帯です。
ソーチェーンの種類
チェンソーのチェーンはそのまま「チェーン」と呼ばれることが多いですが、他のチェーンとの混同を避けたい場面や「チェンソーのチェーン」であることを1語で表したい場合には、業界用語で「ソーチェーン」と呼びます。1本の輪になったソーチェーンを形成する要素を知っておくと、より適切なチェーンを選ぶことができます。
1.チェーンタイプ
チェンソー専門店や林業従事者の間で使われる「91(きゅういち)チェーン」や「25(にーごー)チェーン」といった、「数字+チェーン」の呼称は、チェーンの2つのサイズを省略的に表しているものです。次に紹介する2つのサイズの組み合わせによって、オレゴンでは固有の数字がチェーンに付与されています。
サイズその1.ピッチ
連続した3つのリベットの間の長さを2で割った数値をインチで表しています。チェーンを人間に置き換えると歩幅です。もう少し詳しく説明すると、チェンソー本体に内蔵されている、チェーンが噛み合って回るスプロケット(歯車)の隣り合う山(丁)同士の距離とも言えます。仮に、異なるピッチのチェーンで入れ替えるとスプロケットと歩幅が合わないのでチェーンが回りません。
サイズその2.ゲージ
チェーンのサイズを決めるもう1つの単位です。チェーンのドライブリンクの厚みです。こちらもミリではなくインチで表しています。ゲージはチェーンが回る為のレールとなるガイドバーに設定されている溝幅とも言えます。人間に置き換えると足の横幅です。チェーンのゲージがガイドバーのゲージより大きいとレールに入らず、小さいとレールの中でチェーンが傾くのでまっすぐ切れません。
2.チェーン特性
主にカッター形状やバンパー(事故抑制機構)の有無、チェーン1周当たりのカッターの数が標準か、それより多い、または少ないかでそのチェーンの特性が決まります。それぞれの詳細は次回以降ご紹介します。オレゴンではその特性に応じて、固有のアルファベットをチェーンに付与しています。先に紹介した「91チェーン」や「25チェーン」といった呼称に更に続いて、「25AP」や「25F」、「91PX」や「91VXL」と続きます。つまり、数字が同じであればサイズは同じなので入れ替えも可能ということです。ですが、数字が同じでもアルファベットが異なれば、サンダルとスニーカーぐらい違うものだと考えてください。
3.ドライブリンクの数
ソーチェーンの長さを測る単位で、ソーチェーンの構成部品であるドライブリンクの総数で表します。
チェーンタイプ、チェーン特性、それにドライブリンクの数を加えたものが品番となります。
例)25AP068Eの品番
→25(チェーンタイプ、数字2桁)
→AP(チェーン特性、アルファベット1~3文字)
→068(ドライブリンクの数、この場合は68個)
→**(ドライブリンク以降のアルファベット1~2文字はパッケージ形態を表します)
ソーチェーンは装着するチェンソーのメーカー・型式・バーの長さから、適合する品番が絞られていきます。
林業に適したおすすめのソーチェーン
チェーン特性の1つであるカッター形状は数種類ありますが、その中でも切れ味と扱いやすさを両立した「マイクロチゼル」や「セミチゼル」といった、俗に半丸刃や半角刃とも言われるカッター形状が日本の林業では好まれる傾向があります。
代表的なソーチェーンとして、以下の商品が挙げられます。
25AP(マイクロチゼル)
国産チェンソーメーカーの多くの小排気量機に純正採用されているサイズの小さなチェーンです。小さいながらも切れ味滑らかなロングセラーで、ポテンシャルの高さから30cc後半のチェンソーでも純正採用されることもあります。
21BPX(マイクロチゼル)
中排気量用の代表的なチェーンです。バンパーを備えながらも突っ込み切りのし易い設計となっており、プロ用ながら流通量も多いので入手のし易いチェーンです。
95TXL(マイクロチゼル)
最新技術の切れ味を実現したチェーンです。21BPXユーザーが更なる作業向上を求める時や、少しバーを長くしたい、軽量化をしたい時などに選ばれるチェーンです。
73DPX(セミチゼル)
60cc以上の大排気量用。本社のある北米ではプロの日常作業用のチェーンタイプであり、チェーン特性のラインナップは最も幅広くなっています。
80TXL(マイクロチゼル)
バッテリー式と小排気量エンジン式チェンソーの性能を最高に発揮するために新たに開発された2021年大注目のソーチェーンです。スピードカットナノシステムを取り入れ、切削効率アップによる長時間の稼働とスムーズなカットを可能にしています。
いずれも、カッターが木に深く切り込み過ぎることを防ぐバンパーがドライブリンク上部に付いていることで、切り込みのスムーズ感をさらに高めています。
バンパーがないと、作業時にチェンソーがグイグイ引っ張られる感触になります。また、突っ込み切りの時にドライブリンクにバンパーがある割に作業効率が良いということも好まれているようです。
25AP以外はすべてルブリテックやルブリウェル(チェーンオイルの潤滑構造。チェーンとガイドバーの摩耗を低減し、長寿命化を実現する。)を採用し、またカッターに独自の特許合金を用いて高い耐久性を確保しています。
ひとくちに「林業用チェンソー」と言っても、その種類は様々です。林業に適したチェンソーやソーチェーン選びには、ご自身の用途や目的も考えつつ、上記を参考にしてみてください。
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