チェンソーの刃の研ぎ方(目立て)について解説します

チェンソーのパフォーマンスを最大に高めつつ、安全に使用するためには、チェンソーの刃を正しく研ぐことが大変重要です。
ここではチェンソーの刃の研ぎ方(目立て方法)や、必要な道具類について説明します。
またやりがちな失敗例も解説していますので、参考にしてください。
ソーチェーンの目立て方法
ソーチェーンの目立ての方法には大きく分けて三つの方法があります。
- 丸ヤスリを使ってフリーハンドで研ぐ方法
- 丸ヤスリの動きにガイドを使う方法
- 丸ヤスリ以外で研磨する方法
丸ヤスリのフリーハンドの動きが基本で、且つ最も理解も実践も難しい方法です。まずは丸ヤスリをどの目的でどのように動かすべきかを解説し、その後に他の方法のメリットを紹介します。いずれの場合も、ソーチェーンの状態が良く分かるように、表面についた木くずや油などの汚れをきれいに落としてから始めてください。
丸ヤスリをフリーハンドで使用する
基本となる丸ヤスリを使用したソーチェーンの目立て方法を詳しく解説します。
準備
0.カッターを見えるようにする
慣れない内は目立てをする前後でカッターの状態をよく観察しましょう。カッターは小さいです。損傷や仕上がりの確認のために刃先の状態まで確認しようとすると、肉眼での判別が難しい場合があります。拡大鏡やスマホのカメラや画像のズーム機能を使うと楽に見ることができます。
1.チェンソーを自分に対して目立てがしやすい高さ、位置に置く
無理のない姿勢で、ソーチェーンのカッターがしっかり見える位置取りをしてください。個人によって快適なポジションは異なりますが、ある程度高さのある台にチェンソーを置くことをお勧めします。
2. チェンソーをしっかり固定する
正確な作業の為には対象が動かないように固定しましょう。ガイドバーに挟んでチェンソーを固定する専用のクランプがあります。丸太に切り込みを入れて、そこにガイドバーを差し込んで固定する方法もあります。
3.ソーチェーンを通常より強く張る
目立てをするカッターがなるべく動かないようにします。先のチェンソーの固定もこのカッターを固定する為の作業です。本体で張り調整を強くするか、チェーンとバーの間に木片を挟むなどして、丸ヤスリを当てる時にカッターが動かないようにします。
4.上刃の長さをなるべく揃える
上刃の長さが揃わないと不要な振動が発生します。1番短いカッターを探し、全てのカッターをその長さに研ぎ落して揃えることを推奨します。また、後述するデプス設定をせずにカッターの長さがバラバラであったり、逆に長さを揃えてしまうと切れ曲がりの原因になるので注意してください。
丸ヤスリの用意
5. 正しい直径の丸ヤスリを用意する
ソーチェーンのカッターの大きさによって適合する丸ヤスリの直径は決められています。取扱説明書などで適合する丸ヤスリの直径を確認しましょう。
カッターが消耗していくとカッターの高さも低くなっていきます。丸ヤスリのサイズも合わせて細くしていくということも広く行われています。
6.ヤスリの状態をチェックする
雑巾などで軽く汚れを拭き取ってから使用してください。ヤスリの表面に錆が出ていても、使えば錆も落ちますので、過剰に神経質になる必要はありません。カッターに当てて動かしても削りクズが出なくなってきたものや、見た目でヤスリの目がつぶれているようなものは交換しましょう。
目立てのポイント
7. 目立て角度
木を切る際は、刃の角度が切り込む方向に対して斜めになっていた方が切り込みやすくなります。そこで重要なのが目立て角度です。目立ての際には2種類の目立て角度に注意しましょう。
・上刃目立て角度
カッターを上から見た際の刃先の角度です。カッターの切削効率と持続性に関わってきます。推奨値から±5度の範囲で、鋭角になれば切削効率が上がり、鈍角になれば持続性が上がります。
・横刃目立て角度
カッターを外側から見た際の刃先の角度です。カッターの食い付きと振動に関わってきます。鋭角になれば食い付きが増し、鈍角になれば振動が減ります。
※横刃目立て角度はヤスリの推奨サイズ、上刃目立て角度、後述のダウンアングルとヤスリの頭出しの結果として現れる角度です。「横刃の角度を変える」ということは、上記の要素の何らかを意図的に変更しなければできません。目立てが終わった後にカッターを横から確認し新品時に比べて大きく形が崩れてなければそれで構いません。
・ダウンアングル
上刃目立て角度を維持した上で、チェーンのセンターを支点に10度手元を下げて研ぐことをダウンアングルと言います。
※ダウンアングルを推奨するチェーンでダウンアングルを行わないと、理論上は切れ味の低下に繋がりますが、全く切れなくなるというわけではありません。
8. 丸ヤスリをカッターに当てる際の注意点
丸ヤスリをカッターに当てて動かす際には、以下のことに注意します。
- ヤスリはカッターの内側から外側に向けて一方向に掛ける
- ヤスリは推奨角度を維持したまま水平に動かす
- ヤスリの直径の1/5(20%)が上刃の上に出るように、「頭出し」を維持したまま水平に動かす
- 上刃が波打たないように均等に圧を掛ける
9. 仕上げ
全てのカッターの上刃と横刃の目立て角度、上刃の長さ、ヤスリをかけた断面が均一の色になっていることを目印にしてください。
目立てをしても切れ味が戻らない?
カッターの前方に位置する突起、デプスゲージの高さも調整しなければなりません。平ヤスリで行います。
何度もカッターの目立てを繰り返すと、やがてカッターが短くなるのと同時に上刃の高さが低くなります。そうするとデプスゲージとの高低差がなくなり、効率良く切れなくなります。この場合、デプスゲージを削る必要がありますが、ここで使われるのが平ヤスリです。
デプスゲージを削る際は、専用のデプスゲージジョインターをカッターの上に当て、スロットから突き出たデプスゲージの部分を平ヤスリで削ります。
丸ヤスリの動きにガイドを使う方法
長い説明となりましたが、目立ては「頭で仕組みを理解して、自分の身体の動きの精度を高めていく」という姿勢が必要になってきます。これには中長期で時間が掛かり、また、最終的な到達点に個人差も出てきます。丸ヤスリを補助する形で、各角度や丸ヤスリの頭出し、水平動作を固定できたり、削り代を固定できる器具があります。器具によって補助できる項目が異なりますので、ご自身の苦手な部分に合わせて積極的に活用しましょう。
製品情報:メンテナンスキット
丸ヤスリ以外で研磨する方法
オレゴンでは据え置き型、ハンディ型、パワーシャープがあります。それぞれの特徴を以下に挙げます。
据え置き型 ベンチグラインダー
ソーチェーンを均一に大量に目立てするのに優れています。チェンソー専門店には必ず1台はある機械です。ただし、ホイールを回す為に電気が必要なのと、ソーチェーンをチェンソーから外す必要があります。使いこなすにはソーチェーンに対するある程度の理解も不可欠です。個人の方はよく検討してから購入しましょう。
ハンディ型 シュア・シャープ
ビット状になった丸ヤスリを回転させてカッターを研ぐ機械です。軽量、コンパクトで持ち運びしやすく、使い方も簡単です。据え置き型と同じく、使用には電源が必要なので自身の作業環境と照らし合わせて購入を考えましょう。
パワーシャープ
専用のガイドバーの先端に砥石が入ったケースを装着し、専用のパワーシャープチェーンを回転させてカッターを研磨する仕組みです。追加の電源の必要もなく、どこでも手軽に使用できます。一方で、専用のガイドバーやソーチェーンを使う必要があるなど、先に紹介した方法よりは使用可能なチェンソーは限られます。
ソーチェーンの目立てでやりがちな失敗例
横刃の角度
丸ヤスリのサイズを誤ったり、ヤスリの1/5の頭出しを維持できないと横刃目立て角度が崩れてしまいます。刃の角度が鋭角(フック状)になり過ぎると、木を切る際に必要以上に木に食い込み、抵抗が大きくなります。また、逆に角度が90°よりも鈍角(バックスロープ状)だと、刃が木に食い込みにくくなります。
仕上がりに左右差が出ている
個人の利き手や、目立て前の時点から左右のカッターの損耗の度合いの差によっては、左右で目立て角度がズレたり、片側だけ研ぎ切れていないということが発生します。左右のカッターの仕上がりが異なると切れ曲がりに繋がります。
デプスゲージの設定が不十分
デプスゲージと上刃の高低差が大きすぎると刃の食い込みが良すぎて、チェンソーが木の方に引き込まれてしまいます。同時に切り屑が厚くなり、切り屑の掃き出し口への圧力となってソーチェーンやチェンソー本体を傷める原因になります。
反対にデプスゲージと上刃の高低差が小さすぎると、刃の食い込みが悪くなり、刃が滑って摩耗する原因になります。
目立ての後にはデプスゲージの設定も確認しましょう。
カッターの長さが揃っていない
振動の発生に繋がるのでなるべく揃えてください。カッター1つ1つ、それぞれできっちりとデプスを合わせないと、カッターの長さのバラつきが切れ曲がりに繋がります。逆にカッターの長さを全て揃えても、左右でデプスに差がある場合も切れ曲がりに繋がります。
ソーチェーンは、目立てをする箇所によって使用する道具や研ぎ方が異なります。目立ての際は上記を参考にしてみてください。
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