チェンソーの刃の回転方向は決まっている? その理由とは

多くのメーカーでたくさんの機種が製造・販売されているチェンソーですが、その「刃の回転方向」は、メーカーや機種によって違うのでしょうか?
ここでは、チェンソーの回転方向がどう決まっているか、そしてその理由について説明します。
チェンソーの回転方向は決まっている
結論から言えば、チェンソーの回転方向はすべて同じ方向に決まっています。上の画像でいうと時計回りの方向です。たとえば国産自動車と、輸入自動車とでは、機器の位置が逆になるようなこともありますが、チェンソーではそのようなことはありません。
チェンソーが作られた国やメーカー、その機種に関わらず、回転方向は全世界共通です。また、「逆回転にする切り替えスイッチ」がついたチェンソーも、存在しません。ソーチェーンの正しい向きもすべて同じなので、合わせて覚えておくとよいでしょう。
チェンソーの刃の回転方向が決まっている理由
ではなぜ、チェンソーの回転方向は、全世界共通なのでしょうか。
キックバックを防ぐため
キックバックとは、簡単に言えば「チェンソーの刃が、コントロール不能な状態で作業者に向かって跳ね返ってくる」現象で、チェンソーを使う上で、最悪の場合は死亡事故にもつながりかねない、最も危険な現象の1つです。
キックバックの原理は、反発力によってチェンソーのコントロールが効かなくなることです。主に3種類のキックバックがあります。
1.キックバック
ガイドバー先端の上部おおよそ4分の1の範囲の「キックバック危険ゾーン」が、木または何らかの固いものに触れたときに、ガイドバーが作業者の方向に跳ね返ってくる現象。
2.プルイン
ガイドバーが木に挟まれてソーチェーンが動かないときにエンジンの回転を上げると、作業者が木材側に引っ張られる現象。
3.プッシュアウト
木材の下から上への玉切りなどの際に、ガイドバーの上部が切り口に挟まれる、または異物に当たるなどして、チェンソーが作業者へ向かって押し返される現象。
仮にチェンソーの刃が逆回転すると、これらのキックバック現象が発生する状況をより作り出しやすくなってしまいますので、その危険性をなるべく減少するために、チェンソーの刃の回転方向は常に決められています。
一般的に、高い排気量やパワーを持つ高性能なチェンソーほど、キックバック発生時の反発力も大きくなり、危険度も高くなるといえます。このようなチェンソーを使う際は、特に細心の注意が必要です。
キックバックはなぜ起こるか
キックバックが起こる原因となる反発力の発生しやすい状況は、以下の通りです。
- ガイドバー先端の上部おおよそ4分の1の範囲の「キックバック危険ゾーン」が、木または何らかの固いものに触れたとき
- 切削中に、ガイドバー先端のソーチェーンが木にわずかに挟まれたとき
- 枝払い作業中に、切断している木以外に当ててしまったとき
- 突っ込み切りをしているとき
こうした状況下では、より慎重にチェンソーを取り扱いましょう。また、キックバックの発生を低減するためには、以下のような点に特に注意してください。
作業の環境
- 作業をしている場所に、他の木材など障害物がないか確認する
- 足元を安定させ、バランスの良い姿勢で作業をする
作業の姿勢
- チェンソーを両手でしっかり持つ
- チェンソーを前に倒しすぎない
- 肩の高さより上のものを切らない
チェンソーのメンテナンス
- 正しく目立てされ、適切に張られたソーチェーンで作業をする
- 欠けたソーチェーンを使って作業をしない
チェンソーの使い方
- 常にチェンソーのエンジンはフルスロットル(全開)で切削する
- ガイドバーの先端で切らない
- ガイドバーの上側を使う場合は、通常使用される下側とソーチェーンの走る方向が逆になることを認識しながら使う
- 細い木や枝、低木、下生えを切る場合は、ソーチェーンに絡まないようにする
- 一度に数本の枝を切らない
- 技術が熟練していない場合は、突っ込み切りをしない
その他
- 先端の径が小さいガイドバーを使う
- キックバックを低減するソーチェーン(ドライブリンクにバンパーが付いたタイプなど)を使う
熟練すればある程度の跳ね返りは抑えられる
チェンソーの技術が熟練してくれば、ある程度のキックバックも、力で抑えることができるようになります。これも、チェンソーの刃の回転方向が決まっていることによって、可能になっています。
ただし、チェンソーを使い慣れた上級者であっても、不意にキックバックに遭うことはあります。そのようなときに、ケガを防ぐ・最小限にとどめるために、防護服や各種防護用品などを常に正しく装着してください。
また、チェンソーにはキックバックを含む様々な事故を防ぐ安全装備(チェーンブレーキやハンドガードなど)がついています。チェンソーはきちんと整備し、安全装備が正常に作動するか確認してから作業を行いましょう。
チェンソーを使用する際は、小さな油断が大きな事故につながります。安全にチェンソーを使用するために、上記を参考にしてみてください。
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